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DXの秘訣は”自前主義”にあり「コンサルティングバンク×キャッシュレスバンク×クラウドバンク 北國銀行」

こんにちは、メンバーズルーツカンパニー神尾です。

昨年来、新聞の経済面や経済誌・デジタル系メディアなどで、”DX”という言葉を見ない日は無いくらい毎日のように関連する情報が取り上げられ、ビジネスの現場でもDXが一般用語化(トレンドワード化?)してきたことを感じます。

一方で、それらの情報の多くはDXの概念やDXを構成するテクノロジー(例えばAI、5Gなど)、あるいはDXに関連した企業のサービスを紹介するものであって、実在する企業がその組織の中でどのようにDXに取り組み、どのような試行錯誤を経て社内文化からサービス・事業までを転換していったのか、を知ることの出来るものは多くありません。

しかし、それらに触れることの出来る本が最近発売されました。
「コンサルティングバンク×キャッシュレスバンク×クラウドバンク 北國銀行」(発行:北國新聞社)です。

・・・北國銀行はこの逆風の中、お客様本位の経営を行い、ビジネスモデルを進化させ続けることで、必ず地域とともに発展していけると信じています。 実現のためのキーワードである「コンサルティング」「キャッシュレス」「クラウド」への取組みを事例も交えてお伝えするとともに、目指す姿「次世代版 地域総合会社」の全貌を明らかにします。・・・(上記サイトの紹介文より抜粋)

上記のとおり、必ずしもDXだけを取り上げた本ではありませんが、3つの戦略の実現に通底しているのがDXであり、最後の「クラウドバンク」の章では特に、現時点では数少ない国内企業のDX推進の実情を詳らかに知ることが出来、且つ企業がDXを推進するための要諦・本質が随所に触れられています。

地銀さん向けのDX推進支援事業に取り組む私たちにとって、また私たちが接する地銀関係者の方に沢山の示唆を与えてくれる書籍と思いましたので紹介したいと思います。
全てに触れることは難しいので、ここでは2つ印象に残ったことに触れてみます。

DXとは外形的なものではない

北國銀行さんでは以下の3点を以て”DX”と捉えていると私は解釈しました。

1.全てが顧客本位・顧客中心で考えられていること
2.1を叶えるデジタル内製組織をもつこと
3.アジャイルな働き方

いずれも表層的な取り組みではなく、組織文化そのものの転換無くしてDXは成しえないという事です。
「行内(社内)で”DX”という言葉が独り歩きしているがその定義が曖昧で困っている」
「何から手をつけていいものか・・・」という話を最近よく聞きます。
ネットバンキングをやればDXになるのか?商談をオンラインで行えばDXになるのか?という外形的なことに目が向きがちですが、それがDXの本質ではないことを身をもって教えてくれています。

また例えば1については、キャッシュレス推進にあたり自行発行カード以外の主要なキャッシュレスサービスにも1つの端末で対応できる端末を無料で加盟店に提供することを決めたことや、自行のアプリ内に加盟店自身が販促できる機能を備えた話など顧客ファーストを徹底する姿勢が伺える事例が出てきますので、その点だけとっても読む価値ありかと思います。

DX自前主義の本質は「オーナーシップ」

「クラウドバンキング」の章では、前述のポイント1つ目”顧客ファースト”を実現するために、他行との共通利用を前提にしてきた銀行システムに限界を感じ、自行独自のシステムへの切り替え(開発)を自前主義で実行していく過程やその難所、成果が取り上げられています。
具体的には、
・勘定系システムのパブリッククラウドへの移行
・サブシステムのパッケージソフトを使ったカスタマイズ開発
・ネットバンキング開発
が自前開発の対象として挙げられていました。

これらを100%自行内製で進めたのか、というとタッグを組んで共に乗り越えたシステム会社さんが随所に出てきますのでそうではないことが分かります。
では北國銀行さんの”自前”の定義はというと
“オーナーシップをもって自前の開発部隊を保有し、その上でパートナーと共同で任務を遂行すること”
と述べられています。
つまり、自前(≒内製)かどうかは、業務そのものを自分でやるかどうか、ではなく、自分たちが主体となりあらゆることに責任をもって遂行する意思・姿勢があるかないか、だと言っているのです。

プロジェクト停滞の危機に際して「パートナー側業務(正確に言うとパートナーさんが外注していた業務)を巻き取って自行のシステム部員が担うことにした」というくだりがあるのですが、これが北國銀行さんのいうオーナーシップを端的に表している出来事だといえるでしょう。

普段、DXの進め方(体制・リソース)について伺うと「うちはデジタルは内製(行員)で進めていく方針なんで」と仰る地銀さんがとても多いです。

「事業そのものの転換が”DX”であれば当然自前で行うべき」という考えは、デジタルを専門にする私たちパートナーサイドからしても正しいものと思えます。
一方でDXの課題を聞くと「デジタル人材の不足」「スキル・知見の不足」という回答が圧倒的に多いのも事実です。

このジレンマに対するDX推進体制・人材方針の1つの解が、この北國銀行さんの”自前主義”なのではないでしょうか。
そして、いわゆる外注丸投げと真逆に位置するこの姿勢こそが、未知なる領域へ共にチャレンジしてくれる確かな技術を持つパートナーとの共創を可能にするのだと思います。

ちなみに、パートナーサイドとして今後オーナーシップを発揮する顧客企業側にどう応えていくのかが今後求められると思いますが、
・オーナー以上に自分ごとと捉えて動く伴走者であること
・良い意味でのデジタルカルチャーの伝承者であること
・そして確かな技術力をもつ専門人材であること
だと個人的には考えています。

私たちはDXの業務システムサイドではなく、主にフロントエンドを担うパートナーでありますが、上記を備えた確かな地銀DXパートナーでありたいと改めて考えさせられました。

記事の終わりに

多くの地域金融機関が従来事業の収益維持に苦戦する中、北國銀行さんは本書でも取り上げられているカード業務・コンサルティング業務など新業務の収益を伸ばし、地域産業への貢献を拡大していることがIR資料などから分かります。

この北國銀行さんの実体験を基にしたDX推進の貴重な示唆が得られる、あらゆる業種の企業DX推進担当の方に参考になる本だと思います。
更に、本書の大テーマが「次世代地域金融機関の在り方」のため、地銀にお勤めの方にとっては必読の本と言えそうです。

最後までお読み頂きありがとうございました。
今後も地方企業のDX推進に有用な情報を発信していきたいと思います。

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