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【連載コラム-地銀DXの処方箋】データ見える化とKPIがDX人材を育てるワケ

【連載コラム ー 地銀DXの処方箋】データ見える化とKPIがDX人材を育てるワケ

日本CTO協会が公開しているDX Criteria*では、攻めのIT投資については自社の競争優位に関わる領域のため、内製(或いはラボ型開発)で進めることが望ましいと提言されています。
多くの地方銀行においても、攻めのIT投資=DXと捉え、DX人材の採用・育成に力を入れ内製を模索しているという話を伺う事が多くなりました。
その一方で、独力での推進に限界を感じていたり、DX人材の育成をどう進めるべきか、悩まれている企業も多いのではないでしょうか?
先日公開した九州カードさまの事例は、そのような課題に対して一つの解決の方向性を示している好例だと感じています。

*各社が自社のDXについて、現状を可視化して把握し、改善のための指針を立てられるような基準

本稿では、そうしたDX内製推進の課題解決のために、九州カードさまの取り組みからDX人材の育成のヒントを探ります。

九州カード事例にみるDX推進のポイント

事例では、Webサイト経由でのカード入会数の向上を目的にしていました。
このプロジェクトが成果を上げているポイントは幾つかありますが、最も重要なものを1つ挙げるとすると、データ見える化とKPI策定に最初に取り組んだことではないでしょうか。
最初にWebサイトに訪れているユーザーを正しく理解する事から着手した事が書かれています。そのために行ったことは、Google Analytics等の分析ツールを駆使し、Webサイトに来訪しているユーザーの行動を見える化したことでした。そして、ゴール(=入会申込み)に至るまでにチェックすべき重要な指標を6つのKPIとして具体的な目標数値として設定したことです。
このステップの効用については、本記事では以下のように語られています。

半年ほど経った頃から、実施した施策がこの数字に反映されて、この結果に繋がっているのか、であればここをこうしよう、という形でPDCAが回っていく実感を持てていきました。数字をベースにしたトライ&エラーが出来るようになった印象です。

施策と成果の因果関係が良くわからない、そのためにゴール(=入会申込みの増加)達成のための打ち手が分からないということは、デジタル施策においても起きがちです。
最初に定量的な数字によってユーザーを理解し、課題を把握することに取り組んだ点が、重要なポイントといえるでしょう。

データ見える化とKPIが起こすダブルループ学習

また、このことは単に成果が上がるだけではなく、DXを内製で進めたい企業にとってもう一つの重要な効果を生み出しています。むしろこの点にこそ、これからのDX推進の内製化の大きなヒントがあるといえるでしょう。
それは、DX推進に必要なスキルの育成に大きな効果を生み出していることです。
該当する部分を、再び本記事より引用します。

KPIが出来たことで、チームの週次の定例MTGで数字を基に議論出来るようになったことが大きな変化だと思っています。この数字が上がっているけれども、もう少し深く考えると、単純に喜ぶべきではないのではないか、こっちの数字を重視した方がいいのではないかなど、そういった会話が生まれています。
もしかするとメンバー本人たちは気づいていないかもしれないですが、マネジメントしている私から見ると、無限大は言い過ぎかも知れませんが当初と比べたらまるで別人になったくらいの成長をしたように見えていますよ。

これは、組織学習の分野でいうダブルループ学習が、デジタルチーム内で起きたと捉えることが出来ます。

“ダブル・ループ学習とは問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、それらも含めて軌道修正を行うこと。”
リクルートマネージメント ソリューションズ 人材育成・研修・マネジメント用語集から引用)

図にして説明すると、こうなります。

ダブルループ学習について

KPIが無い状態では、結果と従来行っている行動の中にのみ因果関係を見出すしかなく、過去の枠組みの中で施策が行われている状況に留まります。
例えば「今月数字がいかなかった。それはいつもの月よりもメルマガの本数が少なかったからだ。次回はいつもの月と同じ本数を打とう。」というようなケースです。この状態をシングルループ学習と捉えます。

一方、九州カードさまの事例では、KPIが出来たことによって複合的・多層的な観点で成果を評価することが出来るようになり、組織の中で既存の前提や枠組みに疑念を持ち、新たな視点・発想で行動することがチーム内で起きています。
例えば「実はサイトの集客の量が問題ではなくて、既存会員しか来ていないという質に問題があるのでは?」といったように前提を見直すようなことが該当します。
これがダブルループ学習に当たります。

個人の思考が深まり企画力が上がる、それを基に組織での活発な議論が生まれチームでの学習効果が高まる、そして成果につながる打ち手が継続的に生まれる状態が作れていること。
これらがデータの見える化とKPIが出来たことによる最大の効用といえるのではないでしょうか。

DX人材の育成、DXを内製する組織力のアップにどこから取り組むべきかお悩みの方には、まずデータの見える化とKPIの策定からお勧めしています。

参考資料

メンバーズルーツカンパニーでは、今回の九州カードさまのような地方企業さまや地方銀行さまのDX内製推進を伴走型で支援しています。

関連記事:アジャイル組織への変革を目指せ 地銀のDXが進まない3つの理由~後編~ DX、内製しませんか?

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神尾武志

Profile

神尾武志

テレビ番組制作会社、モバイルサイト制作会社勤務を経て2011年にメンバーズ入社。制作会社時代に、教育サービス系企業の会員サイト・サービスサイトを複数企画・立上げを担当。メンバーズ入社後は、金融会社のサイト運営統括・リニューアルを担当し、アカウント事業部門の部門長職を経て、小売SPA企業のデジタル推進の担当責任者などを歴任。2016年10月より株式会社メンバーズ 執行役員。2020年4月メンバーズルーツカンパニーを立ち上げ。

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