こんにちは、メンバーズルーツの武田です。
『生成AIが出てきているけどCMSと連携させるとどんなことができますか?』『各社のCMSでAI機能ってあるけどどれがいいの?』『AIに検索されやすいCMSってどんなものがありますか?』——CMSの選定や運用のご相談を受ける中で、AIにまつわる声を聞く機会がここ最近で急に増えてきました。
運用現場では、Webサイトの更新だけでなく、SNS運用やメルマガ配信、アプリの更新までチャネルが広がり、運用負荷は上がる一方です。そこにChatGPT、Gemini、Claudeといった生成AIの普及が重なり、『自社でも効率的に活用したい』と考えるのは自然な流れです。
ただ、いざ検討を進めると、AI活用の観点を、正しく理解できないまま、選定を間違えてしまう企業も出てきています。今回はAIの活用を見越した正しいCMSの選び方について解説します。
なぜ、機能の多いCMSを選んでもAIがうまく使えないのか?
CMSを選ぶとき、多くの企業は、CMSの機能を調査し、自分たちで比較表を作り、○×がどれだけ多いかで判断します。今までは「使いやすいか?」「サポートは充実しているか?」「セキュリティは問題ないか?」という観点でチェックをしていたのですが、今は「自動翻訳機能があるか」「AIアシスト機能があるか」という観点が追加されています。たしかにわかりやすい指標ですが、これは表面的な機能の有無しか見られておらず、本質的にAIが活用しやすいCMSかどうかという視点で評価はされていないのです。
AIに活用されやすい状態とは?
では、どのような状態がAIに読まれやすいのかを説明します。
たとえば、あなたが転職を考えていて求人サイトを見ているとします。募集職種、給与条件、福利厚生などの情報が、一つの文章として紹介されている求人票と、募集職種、給与、福利厚生の条件などがテーブルで整理されている求人票があるとします。どちらのほうが理解しやすいでしょうか。
1件だけ見るなら前者でも読み込んで理解できますが、複数の求人を比較したいと思った瞬間に、後者の圧倒的な見やすさに気づくはずです。
AIが情報を読むときも、これと同じことが起きています。見出しも本文も数値も1つの大きな入力枠に書き込まれた「リッチテキスト」を、AIは単なる長い文字列としてしか受け取れません。装飾用の情報はノイズにしかならず、AIは「どこが数値で、どこが結論か」を毎回推測しながら読むことになります。これが、AIに書かせた文章が浅くなったり、ブレたり、重要な情報を見落としたりする原因です。
つまり、機能の数ではなく、コンテンツがフィールド単位で切り分けられているかどうかが、AI活用の成否を分けています。
AIに正しく渡すために、CMSに必要な3つの条件とは
では、何を見て選べばいいのでしょうか。私たちが現場で重視している選定条件は、次の3つです。
意味単位で管理できるか
見出し・本文・数値などが、それぞれ独立したフィールドとして定義・管理できるか。ページ単位のベタ書きのままだと、AIに渡す情報を絞り込めません。APIで外部から取り出せるか
REST APIやGraphQLなどで、フィールド単位のコンテンツを外部から取得・参照できるか。RAGや外部AIエージェントの知識ソースとして使うための前提条件です。複数ページ・複数チャネルで再利用できるか
同じコンテンツを、特定のページに縛られずに別の施策やチャネルへ流用できるか。ここができていないと、AIがどれだけ優秀でも、結局は人の手でコピペする作業が残ります。
AIに正しく情報を渡すとどんなことができるの?
では、この3条件を満たしたCMSで、実際にどんな成果が出ているのかをご紹介します。
株式会社スワニー:Craft Cross CMS
香川県のキャリーバッグメーカーである株式会社スワニー様は、少人数体制での電話対応が課題でした。特に週末は電話対応がなく、週明けに問い合わせが集中してしまい、機会損失が起きていたそうです。
そこで同社は、プレイドの「Craft Cross CMS」と「Craft AI」を組み合わせ、RAG(検索拡張生成)機能を備えたAIチャットボットを導入しました。CMS上のFAQを構造化されたコンテンツとして管理し、それをそのままAIチャットの参照元にすることで、購入前の疑問をその場で解消できる仕組みを作っています。
結果として、電話問い合わせ数は約25%減少、これまで取りこぼしていた「放棄数」も約51%改善しました。1件あたりの対応コストで見ると、AIチャットでの対応は電話対応の約1/3に抑えられているといいます。さらに、サイト全体のCVRは約20%向上し、これまで課題だった休業日の売上も、平日との差が解消されたそうです(出典:CX Clip by KARTE「EC購入時の不安を解消し、売上向上を実現。スワニーがCraft Cross CMSで実現する、『いつでも聞けるAI相談窓口』」)。
ポイントは、FAQを普通の文章の塊としてではなく構造化されたデータとして扱ったからこそ、AIチャットが安心して一次対応を任せられる精度になった、という点です。
株式会社日本デザインセンター:microCMS
もう1つ、構造化の考え方が多言語対応にも活きている例をご紹介します。
株式会社日本デザインセンター様は、ポートフォリオサイトの制作でmicroCMSを採用しています。同社のインタビュー記事によると、多言語対応の実装として、日本語と英語それぞれの情報を対になるフィールドとして用意し、表示言語の切り替えに応じてフロントエンド側で該当する言語のフィールドを呼び出す、という設計を採っています(出典:microCMS導入事例インタビュー)。1つの文章の中に日本語と英語を混在させるのではなく、言語ごとにフィールドを分けておくことで、表示側の切り替えがシンプルになり、更新も迷わず行えるようになっています。
スワニー様の事例が「AIチャットの土台になる整理」だとすれば、日本デザインセンター様の事例は「同じ考え方が多言語対応にも使える」という応用例です。意味のまとまりごとにフィールドを分けておくという設計は、AI活用に限らず、あらゆる自動化の土台になります。
自社のCMSを4つのSTEPで棚卸ししてみる
「うちのCMSはどうなんだろう」と思った方は、次のSTEPで確認してみてください。
STEP1:見出し・本文・数値がフィールドで分かれているか
1つの大きな入力枠に全部書き込んでいないか、まず確認します。
STEP2:同じコンテンツを複数ページ・チャネルで再利用できるか
ページ専用の書き方になっていないか。別の施策やチャネルに使いたくなったとき、コピペからやり直しになっていないか。
STEP3:APIでフィールド単位のデータを外部から取得できるか
外部のAIツールやチャットボットから、必要な情報だけを取り出せる構造になっているか。
STEP4:AI機能やMCPのような仕組みが、今の設計で使えるか
「将来的に対応できそう」ではなく、今のCMSの設計ですでに対応できるかを確認します。
どこかに「いいえ」がついた方は、機能を足す前に、まずそこがボトルネックになっている可能性を考えてみてください。
まとめ:AI活用を見据えたCMS機能比較資料を公開
一般的に、CMSのリニューアルは数年〜5年以上運用し続けることが多いため、今後のAI活用への拡張性に備えられているかどうかで、今後の運用効率に差が出てくると感じています。
CMS選定で見るべきは、機能の数ではなく、コンテンツをAIに渡せる構造になっているかどうかです。この視点を持つだけで、次のシステム更改やRFPの書き方は大きく変わるはずなので、今後の選定材料の一つとしていただけますと幸いです。
また、今回、生成AIと相性が良いCMS(Craft Cross CMS)を提供されているプレイド社と共同で、主要なCMS10製品を「構造」の視点で整理した比較資料を用意しました。気になった方は、ぜひ覗いてみてください。
